第154章 結衣

大島史也は折り畳まれていた紙を開き、机の上に広げると、眼鏡を掛け直してじっくりと見入った。

その表情は、まるで滅多にお目にかかれない至宝を鑑定しているかのように真剣だ。

この子の字は、筆の運びが正しく、しなやかで美しい。空間を切り取るように勢いを取り、穂先を素直に入れていく。線は締まり、骨がある。

思わず目が覚める出来だった。

二宮遥人も身を寄せて覗き込み、顎に手をやる。

「結衣。まさかとは思ったけど、碁が強いだけじゃなくて字まで上手いんだな」

大島史也は視線を宣紙の上で泳がせたまま、堪えきれずに口を挟む。

「お嬢ちゃん、この字は誰に習った?」

「師匠に」

「師匠って、誰だ...

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